とぼしい情操なれど(僕なりの鑑賞) 端居して海の見ゆるをよろこびぬ老父母(おや)ます家に帰りたる朝 橋本春生 久々に帰郷して一夜明けた朝でしょうか・・・・・。 子供のころから見慣れている海を、縁側に出て見ていると、親元にいることのできる、つかの間の喜びが、限りなく尊いものに思えてくる・・・・・。
とぼしい情操なれど(僕なりの鑑賞) 吾を待ち待ち給い得て言(こと)に出でず吾も言(こと)触れずかくて今日暮れぬ 橋本春生 待ち続けて再会できた今は、父母も吾も、ことさら言葉に出さずとも、また、言葉に出せば、なおさら別れがつらくなるから、今を喜ぼう・・・・・。
とぼしい情操なれど(僕なりの鑑賞) 玄海の黒潮の上に今をいて広きかも蒼きかも大わたの原 橋本春生 玄界灘の黒潮に舟をこぎだしているのでしょうか・・・・・。 その広く蒼き大海原に・・・・・。
とぼしい情操なれど(僕なりの鑑賞) 和(やわ)らかき南の風のよき風に親子語らう縁あたたかく 橋本春生 久々に帰郷しての、年老いた両親との語らいは尽きるところがありません・・・・・。 南の風さえ、温かく迎えてくれているのです・・・・・幸せであるように。
とぼしい情操なれど(僕なりの鑑賞) 久にしてつのる親子が物語り今宵海の音の近うきこゆる 橋本春生 久々に帰郷しての親子の語らい・・・・・。 話は尽きません。 今度いつまた会えるのか・・・・・。
拙歌を一首 剪定のなされていちょう貧相になるも萌黄の若葉の芽吹く 藤本楠庭
とぼしい情操なれど(僕なりの鑑賞) 歯ともしき父と母との物語りかたみに聴きて夜を更かしたり 橋本春生 父母のなれそめの物語でしょうか・・・・・。 年老いたご両親との大切な時間・・・・・。 限りなく幸せな時間でしたでしょう・・・・・。
とぼしい情操なれど(僕なりの鑑賞) 我に賜(た)ぶと小さき蜜柑をむきたまう老母(はは)の手の皺にまなこそむけつ 橋本春生 久しぶりに帰ってきた息子に、小さな蜜柑をむいてやる母君。 その手の皺に、すべてが籠っている・・・・・。
とぼしい情操なれど(僕なりの鑑賞) 筍のよく生え出でし裏山を見すると老父(ちち)は先に出でたたす 橋本春生 筍の良く取れそうな裏山を、老いたる御父上は見せたいんでしょうね・・・・・暫くぶりに帰ってきた息子に・・・・・。
とぼしい情操なれど(僕なりの鑑賞) 蓼なびく里川渡り老松の梢(うれ)見ゆるにぞいや急がるる 橋本春生 蓼(たで)がなびいている懐かしい故郷の川を渡り、馴染の老木の松が見えてくれば、いやがうえにも心が逸る・・・・・。